町全体が世界遺産に登録されているシントラは、ポルトガルの首都リスボンから西へ約30km。ポルトガル王家の夏の避暑地として愛された、風光明媚な山間の町です。その歴史は7~8世紀、イベリア半島に侵入したイスラム教徒のムーア人が城を建設したことに始まり、ムーア人からリスボンを奪回した初代ポルトガル王アルフォンソ1世により1147年、ポルトガル王国に併合され今に至っています。
2本の巨大な煙突が特徴的な「王宮」は、14世紀にエンリケ航海王子の父ジョアン1世が夏の離宮として建て、16世紀にマヌエル1世が莫大な富をつぎ込み増築。内装には高価なアズレージョ(装飾タイル)が多用され、大航海時代の繁栄を偲ばせます。マヌエル1世はこの王宮でヴァスコ・ダ・ガマによるインド航路の開拓を決定。後年、日本の天正遣欧少年使節団も招かれたといわれています。それから300年後の19世紀、廃墟となった修道院を改築し建てた「ペナ宮」は、イスラム、ゴシック、マヌエル、ルネサンスなど様々な様式が混在し、カラフルなおもちゃのお城のよう。かつてのポルトガル王国の輝きを取り戻そうとするかのように、遠くリスボン市街や大西洋を望む標高529mの山の頂に聳え立っています。
そこここに泉が湧き、したたる緑の丘に見え隠れする王侯貴族の豪奢な館。英国の詩人バイロンが「この世のエデン」と称えた美しき町は、今もポルトガル王国黄金期の残り香を放ち続けています。
王宮
ペナ宮殿
ムーア人の城
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