旧西ベルリンと旧東ドイツのポツダムに残る150棟もの宮殿と500万haにおよぶ公園群。18~19世紀にかけてプロイセン王国の君主たちが築いたもので、周囲の自然と調和して芸術的ともいえる美しい景観を形成しています。なかでも必見は、ドイツ・ロココ建築の傑作と謳われるサンスーシ宮殿。フリードリヒ2世がヴェルサイユ宮殿を模して建てた夏の離宮で、サンスーシ(sans
souci)とはフランス語で「憂いなし」という意味だそう。6つの階段式ブドウ畑を上った正面に横たわる平屋造りの建物は執務室兼寝室、大理石の間、図書室、ゲストルームなどから成り、約40分間のガイドツアーで見学することができます。アドルフ・フォン・メンツェルの絵にも描かれた音楽室もあり、フルートを演奏する大王の姿が目に見えるようです。
広大な敷地のサンスーシ公園には、ほかにも新宮殿、中国茶館、シャルロッテンホーフ宮殿、オランジュリー(温室)などが点在。後期バロック様式の新宮殿は部屋数200以上もあり、こぢんまりとしたサンスーシ宮殿とは好対照を見せています。時間が許せば、王家所有の絵画コレクションを収蔵する絵画館へも足を運んでみたいもの。カラバッジョの「聖トマスの懐疑」を含む17世紀イタリア、フランス、フランドルの作品が100点以上も展示されており、見応えは十分。ハーフェル川の水辺の風景を楽しみながら、新庭園へと向かえば、奧には英国チューダー様式のツェツィリエンホーフ宮殿が控えています。
ベルリンの北西へ足を運べば、第二次世界大戦の戦火から免れたシャロッテンブルク宮殿がプロイセン時代の栄華を今に伝えています。
(上・中段)「●サンスーシー宮殿の庭園」 (Sanssouci castle)
サンスーシ宮殿は、1745年から1747年にかけて大王が自ら設計に加わって建てられた夏の居城だ。内部は自然からインスピレーションを受けたロココ様式の装飾で飾られている。
(下段)「◎ツェツィーリエンホフ宮殿」(Schloss Cecilienhof)
ツェツィーリエンホーフ宮殿は、1917年に当時のドイツ帝国皇太子であったヴィルヘルム・フォン・プロイセンのために、皇帝ヴィルヘルム2世が建てました。宮殿の名前は、皇太子妃ツェツィーリエにちなんでいます。
1918年にヴィルヘルム2世が亡命・退位したため、宮殿は国のものとなりました。そして、1945年にはソ連軍に占領されてしまいます。
同年、ここでアメリカ・イギリス・ソ連の首脳が一堂に会し、ポツダム会談が開かれ、第二次世界大戦の戦後処理についての話し合いが持たれました。ベルリンの都市の損傷が激しかったため、警備の容易なこの場所が選ばれたといいます。宮殿はイギリスの別荘のようなスタイルで、いわゆる荘厳華麗な外観ではありません。しかし内部は皇帝一族の居所らしく上品で落ち着いた雰囲気です。
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