『児童期から思春期へ』 De I’enfant a I’adolescent




マリア・モンテッソーリ 著
クラウス・ルーメル 江島 正子 共訳
Maria Montessori,
trsl. Klaus Luhmer, Johanna Masako Ejima

                   玉川大学出版部


―モンテッソーリの一貫教育―
目 次
日本の友だちへ  レニルデ・モンテッソーリ
紹介とともに  松本静子
はじめに  A・M・ヨーステン
発行者のことば
 
1  教育の連続的発達段階
2  変態
3  7歳児から12歳児の道徳上の特徴
4  7歳児から12歳児のニーズ
5  文化への鍵(抽象化―想像力の役割―「外に出かけること」)
6  水
7  化学の体験
8  自然のかなの炭素
9  無機化学の関する若干の考察
10 有機化学に関する若干に考察
11 まとめ
 
付録
 A 「大地の子ども」
 B 学習と仕事の計画
 C 大学の機能について
 

おわりに
索引


   日本の友だちへ
 
                              レニルデ・モンテッソーリ
 
 マリア・モンテッソーリ(Maria Montessori 1870〜1952)は、子どもの発達段階についてとても啓発されたヴィジョンを持っていました。これは種々の文化、社会、人種を背景にした子どもを数十年、科学的に観察した結果です。彼女は根気よく研究し徹底的理解から生じる英知に達し、すべての偉大な科学者と同様、発見したことをシンプルに、社会のすべての人に分かるようになさいました。子どもとの経験によって、また異なった環境における子どもの行動調査によって、各々の発達段階特有の特性を発見したのです。
 マリア・モンテッソーリは『児童期から思春期へ』のなかで大きな問題を簡単な一事例として示し、子どものそれぞれの発達段階で変わる特性に共通考察を加え、子どもの教育にたずさわる大人に明瞭なガイドラインを提示し、自己規律のプロセスにおいてはその発達段階に起こる固有なニーズに、どのようによりよく対応できるかを明らかにしてくれました。
 教育者の名前にあたいするための不可欠な条件は子どもを完全に受け入れることです。教育者は一人ひとりの子どもをよろこんで受け入れる能力、子どもが大きくなって学んで努力して、最後には開花するプロセスを黙って歓迎する能力を持たなければなりません。このようにして子どもは生き生きとした、全き栄光のうちに人間としての存在になり、そして自己の存在を楽しみ、さらにまた、まわりの世界すべてを楽しむようになります。
 子どもは大抵、厳しい経済の、移り変わるニーズに、多かれ少なかれ資格のある貢献者として育成されます。それで子どもの心は灰色になり、引き裂かてしまいます。古くさく意味のない伝統に頭を下げるように強要されます。それに反発するなら、愛し尊敬する人に逆らう、あらゆる苦しみと悩みが避けられなくなります。そして、反発しなければ、子どもは昔の哀しい幽霊の奴隷になるという屈辱に悩まされます。
 私たち教育者は子どもの力の強さと情熱、成長する傾向、剛毅さに気づくことを学ばなければなりません。それによって教育者のきわめて重要な課題を手助けし勇気づけます。というもの、人類の運命、そして良きにつけ悪しきにつけ私たちの住んでいる美しい地球は、この地球に私たちは誕生しそんなに遠からず再び地球に戻るのですけれども、私たちの子どもに依存しているからです。なお、何故良きにつけ悪しきにつけなのかというと、それは現代の世代と将来の世代をどのように教育するかにかかっているからです。
 本書は今日、明日、未来の数世紀にわたる教育のあるべき道を示しています。先生、親、人類と人類の進歩に関心をもつ人すべてを招き、そして隷属してない文字通りの教育者、すなわち子どもに内在する大きな未開花な可能性を目醒めさせることのできるような教育者になるように助言を与えてくれるでしょう。
 
                                                 国際モンテッソーリ協会総裁