トロイ遺跡



トルコ西部、エーゲ海を数キロ先に見渡す丘に広がるトロイ遺跡は、ドイツの実業家ハインリッヒ・シュリーマンが1870年から3年を費やして掘り当てた遺跡。古代ギリシアの詩人ホメロスの英雄叙事詩『イリアス』によれば、トロイは王妃ヘレネをめぐり、ギリシアと10年におよぶ戦争(トロイ戦争)となり、「トロイの木馬」の計略により、一夜にして陥落した伝説の都。シュリーマンは、神話上の都市と考えられていたトロイの実在を信じ、私財を投じて発掘に成功しました。
その後の考古学者による発掘で、トロイ遺跡では紀元前3000年ごろに始まる初期青銅器時代(第1市)から、紀元前350〜400年頃のローマ時代(第9 市)まで、9層にわたり積み重なる都市の遺構が発見されました。シュリーマンは多くの財宝を発掘し、ギリシア軍に攻め落とされたトロイの王の名から「プリアモスの財宝」と名付けましたが、それらはトロイ戦争より1000年以上も古い時代のものと判明。彼が掘っていたのは、紀元前2600〜2300年ごろの第2市だったのです。
トロイ戦争が史実として、その遺構に推定されるのは、紀元前1300〜1200年ごろの第7市の層。しかし、考古学の知識がなかったシュリーマンはやみくもに掘ったため、第7層の遺構は大部分がそこなわれ考証が困難になりました。このため、トロイ遺跡が『イリアス』に登場するトロイかどうかは、今も謎のまま。シュリーマンの情熱が実を結び、神話が実話に変わるときはくるのでしょうか。

<トロイの木馬は改修中でシートに覆われていたので、改修前の絵葉書を購入>


   

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