エフェソスの南3kmほどに位置する「聖母マリアの家」は1世紀に使徒ヨハネがマリアのために住居を建設し、4世紀に住居兼礼拝堂に増築されたというその場所にたたずんでいる。19世紀、ドイツの聖アウグスチノ修道会の修道女アンナ・カタリナ・エンメリックは寝たきりだったが、イエスやマリアの生涯のイメージが頭の中に現れるという幻視で知られていた。あるときエンメリックはエフェソスで暮らすマリアの姿を幻視し、サモス島を見下ろす丘に立つことや家の形などを鮮明に伝えた。この記録に基づいて調査が行われ、1881年にフランスの司祭らが適合する丘を探し当て、1891年に1世紀のものと見られる遺跡を発見した。使徒ヨハネや聖母マリアに関する証拠が発見されたわけではないが、1896年に教皇(法王)レオ13世が訪問し、1950年にはピウス12世が聖地として公認し、1951年に聖母マリアの家が再建された。典型的な石造のローマ建築で、礼拝室を備えているほか、泉から湧き出し幸福や癒やしをもたらす「マリアの水」や、望みを託した紙や布を貼り付けると願いが叶うという「願いの壁」などが人気を博している。 |