世界中にある多様な公園の中でも、スペインのバルセロナにあるグエル公園はとりわけ異彩を放っている。今でいう高級住宅団地として整備されながら、公園として陽の目を浴びてきたその生い立ち。一見奇抜にしか見えないデザインに隠された自然の摂理を活かした合理的な設計思想。古き良き姿を生かしながら、時代のニーズに合わせて柔軟に使いやすさを改善する管理の姿勢など、この公園は多くの示唆を与えてくれる。
グエル公園の建設は、1895年にスペイン貴族エウセビオ・グエル伯爵がバルセロナ郊外にあった15ha の土地をもつ1 軒の農家を購入したことに始まる。1902年、彼は建築家であるアントニオ・ガウディとともに、この地に60軒の邸宅をもつ英国風のガーデン・シティの建設に着手した。
大規模な地形の改変を避け、また、椰子などこの地特有の植生を活かして設計されたガーデン・シティであったが、分譲されたのは現存するトリアス邸、ガウディ自身が購入したパイロットハウス、農家を改築したグエル氏の邸宅のわずか3軒のみであり、このプロジェクトは住宅開発としては失敗に終わった。
その後、1922年にバルセロナ市に譲渡され、市民の憩いの場となる公園として開放された。1984年にはユネスコの世界遺産に登録された。
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