スペイン メスキータ@コルドバ



約850本の円柱が支える紅白のアーチが延々と続く「円柱の森」。そして、その奥に覗くマヨール礼拝堂の祭壇。イスラム建築の粋メスキータ(モスク)とキリスト教の聖堂が同居する、この世界に稀な建築はローマ時代からの古都コルドバの象徴です。メスキータが建てられたのは後ウマイヤ朝の首都となった8世紀のこと。まずオレンジの中庭と信徒が身を清める噴水、礼拝堂が造られ、10世紀まで3度の拡張が重ねられ大モスクになりました。精緻なレリーフの装飾が施されたミイラブ(メッカの方向を示す壁のくぼみ)には、コーランの一節が刻まれています。

その後、13世紀にコルドバを奪還したキリスト教徒は、メスキータの一部を壊し聖堂を建立。16世紀にはゴシック様式の祭壇やパイプオルガンを設えた絢爛豪華な礼拝堂が完成しますが、キリスト教徒もメスキータの洗練された建築美を「我々にはつくれない文化」と認め、異なる宗教の建築が混在する特異な空間が残されました。

メスキータは1984年、世界遺産に登録。1994年にはイスラム王の宮殿跡に建てられた城・アルカサル、花咲きみだれる白壁の小径が続く旧ユダヤ人街などを含むコルドバ旧市街が登録拡大されました。長い歴史とともにつくられたコルドバの街。とりわけ600ものモスクが林立し、学問芸術が花開き、「西方の真珠」と讃えられたのはイスラム時代。その至宝であるメスキータは、2つの文化が混合・融和した不思議な魅力をたたえ、時空の旅へといざないます。


   

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