メキシコ ウシュマル遺跡



メキシコ・ユカタン半島の鬱蒼と樹海が広がる丘陵地帯に、忽然と現われるピラミッドや宮殿、球戯場跡などの遺跡群。中央アメリカで紀元前に興り、スペイン人の侵入によって16世紀に歴史から姿を消した謎多きマヤ文明。ウシュマル(Uxmal) は、その文明が最盛期にあったと考えられている7〜10世紀に繁栄した古代都市の1つです。

ウシュマルの建築物は、切石に複雑な幾何学模様や動物をモチーフにした彫刻を施し、組み上げて造られています。この建築様式はプウク様式と呼ばれ、過剰と思えるほど華麗な装飾が特徴です。プウクとはマヤ語で「丘」を意味し、マヤ人がユカタン半島の丘陵地帯をプウクと呼んでいたことから名付けられました。装飾の中でも多いのは雨の神「チャック」像です。高さ38mの「魔法使いのピラミッド」は、小人が一夜にして造ったという伝説があり、マヤ遺跡では珍しく、土台が楕円形をしているピラミッドです。丸みを帯び柔らかい印象を与えるこの建造物も、チャック像で埋め尽くされています。近くに河川がなく乾燥した丘陵地帯に暮らすマヤ人にとって、雨水はまさに命の綱であり、雨の神を深く崇拝していたと考えられます。

1996年に世界文化遺産に登録されたウシュマルは、多くのマヤ遺跡の中でもとりわけ保存状態が良く、独自に発達した高度な文明にふれることができます。


   

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