正式名称:【世界遺産】ポンペイ、エルコラーノ及びトッレ・アヌンツィアータの考古地域群(Archaeological Areas of Pompei, Herculaneum and Torre Annunziata)
風光明媚なナポリ湾に面し、ヴェスビオ火山の雄大な山容を望む古代遺跡ポンペイは、ローマ帝国の商業区として、また貴族たちの保養地としても栄えていました。「秘儀荘」と名付けられた邸宅には、ディオニュソスの秘儀を描いた有名な壁画があり、1900年の時を越え、「ポンペイレッド」と呼ばれる鮮烈な色をとどめています。
今は穏やかに見えるヴェスビオ火山が、大噴火を起したのは西暦79年8月のこと。時速約100kmの火砕流が襲い、ポンペイは1日足らずで厚さ6mの火山灰の下に。そして1700年間放置され、18世紀の本格的な発掘で、整然とした街並みや建物だけでなく、壁画などの美術品が、ほぼ当時のままで姿を現わしました。街全体を覆った火山灰が皮肉にも乾燥剤の働きをし、劣化を防いでいたのです。碁盤目状に区画された街は上下水道が整備され、石畳の馬車道には横断歩道も。スタビアーネ浴場など多くの公衆浴場や居酒屋もあり、悲劇詩人の家と呼ばれる住宅の玄関先には犬のモザイク画と「猛犬注意」の文字が…。今と変わらぬ生活が垣間見え、微笑ましく感じられます。
政治的にも文化的にも最盛期を迎え、豊かな暮らしを謳歌していた2万人ともいわれるポンペイの人々。しかしヴェスビオ火山の噴火で2,000人以上が逃げ遅れ、一瞬にして奪われてしまった平穏な日々。悲劇と引き換えに灰によってそのままの姿を留める街並みや生活は、訪れる者をタイムトリップしたかのような気持ちにさせます。
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