デリーにあるフーマユーン廟は、16世紀に興ったムガル帝国の第2代皇帝、フーマユーンの霊廟。妃のハージ・ベーガムが、49歳で急死した夫を悼み、故郷のペルシャから建築家を招き、9年の歳月と自身の生涯をかけて完成させたもの。ムガル様式建築の原点といわれる壮麗な建築物は、1993年に世界遺産に登録されました。 赤砂岩と白大理石の組み合わせが鮮やかなコントラストを見せるフーマユーン廟は完成当時、それまでのインドにはなかった独特のスタイルをもつ建築物でした。ドームやアーチ、精緻な透かし彫りなどイスラムの建築様式と、柱やはりといったインドの建築様式が融合した初めてのムガル様式の建築として、あのタージ・マハルに大きな影響を与えました。 フーマユーン廟は、イスラム様式の幾何学的な庭園の中央にそびえる総大理石の高さ約38mのドームを中心に、シンメトリーにデザインされています。田の字型に水路が巡らされた正方形の庭園は、チャハル・バーグ(四分庭園)と呼ばれ、イスラム教徒の「天上の楽園」を表しています。妃が建てたドーム真下の地下深くで、永遠の眠りにつくフーマユーン帝。妃の愛がなければ、優美な姿を今に伝えるフーマユーン廟はもちろん、ムガル建築の最高傑作と称えられるタージ・マハルも誕生していなかったかもしれません。
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