インド エローラ石窟寺院



紀元前500年頃シャカによって開かれた仏教、仏教に代わりインドの社会に深く根付いていったヒンドゥー教、そして仏教とほぼ時を同じくしておこり、商業関係者に信徒の多いジャイナ教。インド発祥の3つの宗教の寺院群が1か所に集まる世界でも例をみない遺跡、それがエローラ石窟群です。

ムンバイから北東へ約380km、デカン高原の岩山をくり抜いた34の石窟が南北約2kmにわたり連なります。南端の第1〜12窟は仏教石窟(5〜7世紀)。ほとんどの石窟が修行のための僧院として使われ、唯一仏塔と仏像が祀られた10窟は、巨大な生き物の胎内を連想させる肋骨のような天井が印象的。第13〜29窟はヒンドゥー教石窟(7〜9世紀)。とりわけ第16窟はカイラーサナータ寺院と呼ばれ、エローラ最大の見どころ。高さ約32m、幅約45m、奥行き約85mという規模もさることながら、柱や梁、神々の像、ヒンドゥー教の神話「ラーマーヤナ」「マハーバーラタ」を題材にした精緻なレリーフまで、1世紀以上かけツチとノミで岩山から彫り出した、巨大な彫刻作品です。北端の第30〜34窟はジャイナ教石窟(9〜10世紀)。彫刻の繊細さはヒンドゥー教石窟を凌ぐともいわれます。

エローラ石窟群は、アジャンター石窟群とエレファンタ石窟群に並ぶインド三大石窟の一つです。この中でも、3つの宗教の石窟が見られるのはエローラ石窟群だけ。石窟は年代順に並び、同時期の異なる宗教の石窟もあり、宗教に寛容なインドの懐の深さと、寺院建造へ人々を突き動かした力に驚かされます。


   

目次へもどる

直線上に配置