ハトシェプスト女王葬祭殿は、エジプトの世界遺産「古代都市テーベとその墓地遺跡」のナイル川西岸にあります。西岸は、王家の谷やデル・イル・アマディーナなどの墓地遺跡群があり「死者の世界」とされてきました。 ハトシェプスト女王葬祭殿(別名:デール・エル・バハリ神殿)は、王家の谷の東、切り立った断崖の下に建設された太陽神アメンラーを祀る葬祭殿です。ハトシェプスト女王は、王家の谷に初めて王墓を築いたトトメス1世の娘であり、トトメス2世の王妃でもあった女性です。 そのハトシェプスト女王の墓が、なぜ、王妃の谷ではなく、王家の谷にあるかというと、ハトシェプスト女王は、エジプト初のファラオとなった女性だからです。彼女は、トトメス2世の死後、即位した幼いトトメス3世の摂政となり権力を手にします。やがてトトメス3世に変わり、自らファラオを名乗り実権を握ります。彼女は、ファラオとして公式の場では、あごひげを付け、装いも男性の衣服を身に付けるほどの徹底ぶりだったといいます。 ハトシェプスト女王葬祭殿は、3層のテラスとそれらを結ぶ傾斜路からなります。テラスには、男装のハトシェプスト女王の立像がありましたが、彼女の死後、ようやく即位したトトメス3世の手により一部破壊されてしまいます。また、内部の壁や柱にあった女王の壁画や碑文も、すべて削り取られています。しかし、葬祭殿内にある礼拝堂などには、プント国との交易の様子、アヌビス神やほかの神々のレリーフなどが残っています。 |