28兵庫県 旧大岡寺 庭園

フレーム

住所:兵庫県豊岡市日高町大岡寺東西17
アクセス:JR江原駅〜タクシー
作庭・作者:枯山水庭園
文化財:国指定名勝

◆大岡山と大岡寺
 大岡山のふもとから山頂近くまで、歩くと2時間程かかる距離を車で上がってきた。車道から木々の繁る斜面を下りると視界が開け、庫裡跡の奥にひっそりと庭園は保存されていた。
 大岡山は古くから神の山と信じられ、厳しい修験霊場だった。大岡山の4つの登山口にあたる位置に4か所の鳥居があり、薬師堂、護法所、拝殿、温屋、僧坊などの堂舎のほか、大岡神社、白山権現社などが建立されていた。盛時には大岡寺は塔頭12坊を数えた古くからの名刹であった。
 ところが、1495(明応4)年に山焼きの飛び火を受けて寺は全焼した。全山の僧は再興に努め、本尊の薬師如来は1500(明応9)年に完成し1500年代に本堂建立、1683(天和3)年に本堂が再建された。

◆作庭時代と作者
 西桂氏は著書『兵庫の庭園』で、作庭時と作者について次のように記された。「室町時代の再建から江戸初期の中興期まで、183年(資料的に空白)という年月が経っていることなどから考えても、再建時に作庭され、中興期にいたって庭も若干、書院の前あたりを手直ししたのではないかと思われる。立地条件や巨石の剛健な石組みなどから、朝倉氏諏訪館庭園(福井県一乗谷)に見られるような作庭手法と感覚的に似たところが多く、戦国末期の作庭と考えてよいのではないだろうか」
 一乗谷朝倉氏遺跡は、戦国時代の越前国守であった朝倉氏の本拠地である。朝倉氏は大岡山のふもとの山宮から10キロほど離れた村の出身である。ともに誰の作庭かを知ることはできないが、大岡寺庭園作庭にあたって何か関係があったのかもしれない。

◆文化財指定
 1968(昭和43)年に重森三玲氏が、何人も知ることがなかった本庭を発見した。山岳寺院の不便さと維持困難さのため、痛みのひどい本堂を残して寺院は山麓に移転し、庭園は雑木雑草が繁茂して荒廃を続けていた。にもかかわらず、氏は「本寺が旧時盛大な勢力を持っていて、一流作家を招いて作庭したものであろうことが一考される」と記している。重森氏によって旧大岡寺庭園は広く知られるところとなり、1972(昭和47)年に県指定の文化財(名勝)になった。指定面積は庭園部分の約358平方メートルであった。
 その後西桂氏も本庭を調査し、「国の文化財としての価値を有する」と述べている。そして1989(平成元)年の国の名勝指定となり、庭園が寺院の境内や借景も含めたなかで作庭されたものである。という考えから、指定範囲は旧境内地と裏山の斜面を含む4,972平方メートルとされた。

◆庭園の鑑賞
 庭園は書院から鑑賞することを思いだし、床高さに近いと思われる庫裡跡にある石の上に立ってみた。池泉手前の大きな石(163センチ)が邪魔になって眺めがしっくりこない。
 もう少し南側から見るほうが良いと思えた。西桂氏と同様に感じたことを後で知った。「書院からの景観と庭の作りが一致しないということは、鑑賞の位置がもう少し南東寄りにあったと考えるべきである。つまり、作庭時の書院の位置はもう少し南東寄りにあったと考えざるを得ない」という氏の文章に出会った。この本出版の後に、西桂氏を含む旧大岡寺庭園整備検討委員会が設けられ、整備計画案が立てられた。整備を具体化にするため、日高町教育委員会を事務局とする整備委員会が発足し、1991(平成3)年度に境内の発掘調査が行われた。
 発掘調査の結果、火災以前のものと思われる最下層の石列(庫裡東側)、その上の石列からも現在とほぼ同位置に庫裡が建てられており、作庭当初は今よりさらに大きな池で、底を粘土で張った構造だったと確認された。平面図にあるように、庫裡書院のすぐ前に汀線があったことがわかった。

◆旧大岡寺庭園保存修理事業と庭園の今後
 1993(平成5)年度から1995(平成7)年度まで3ケ年、32,855,000円をかけて保存修理工事が行われた。滝石組整備、池護岸整備、水路修復整備、履土の整理と雑草を取り除くなどの境内整備、石垣の整備、排水整備などが行われ、本堂跡、山門跡は土壌硬化舗装され、大岡神社跡は砂利舗装、庫裡跡は芝舗装された。
 400年以上も前からこのままの姿で存在していたように思えた庭園は、原形を損なわないように上手く修復されていたのである。
 庭園は庫裡書院から眺めることを前提に作庭された。庭園があっての建物であり、建物があっての庭園である。両者が一体となることによって、素晴らしい空間が作りだされてきた。庭園のみ保存されるのではなく、例えば庫裡書院が復元されれば、庭園はもっと生きてくるだろう。
 澤良雄氏の仕事であるが、国指定名勝の安養院庭園には、敷地の名勝指定外部分に神戸市北区の茅葺き民家が移築され、庫裡書院となっている。素晴らしい庭園は建物があってこそふさわしい。多くの人々にここを訪れてもらって、本庭園の良さを知っていただきたいと思う。(日高町教育委員会HPより)

私的満足度「★★★」:名勝庭園の中でも有数の不便な庭です。ここさえ観てしまえば全制覇も視野に入ります。江原の駅から本数の少ないバスに乗り、バス停から徒歩50分とサイト情報にあったのですが、時間が無いのでタクシーで訪問。運転手さんもかつて1度乗せたことがアルとのことで山道を登っていきます。もう進めないところからは藪の中を100mほど歩くと遺跡がありました。最難関の庭と覚悟していただけに自分的には感動しましたが、冷静に見るとどうということない出来でしょうかね。タクシー代は駅まで往復で9980円でした。



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