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エドワード・ヴァン・ヘイレンの初期ギターサウンド研究

Edward Van Halenの初期のサウンドは、どのようにしたら出せるのか?
いろいろ調べてみた。


ギター編

白黒フランケン(*)
BODY:材はホワイトアッシュ2P。重さは中くらい(あまり重過ぎない)。
     塗装はニトロセルロースラッカーではなく、バイク塗装用のアクリルラッカー。
NECK:材はバーズアイメイプル。指板は貼りメイプル。塗装なし。Rはレスポール位か?
     幅は普通のストラトより広く、厚みは薄い(らしい)。
PU:1961年頃のES335のオリジナルPAF。最初好みの音が出なかったため、
   セイモア・ダンカンに好みの音になるまで(4日間程かけて何度も)リワイアしてもらった。
   ボディに直付け。弦との距離は不明だが、1/8インチ(約3mm)と言われている。
   ポールピースの高さは普通のようだ。指1本半分ブリッジから離し、
    弦間とポールピースのずれを少なくするため少し斜めにしている。
   また、コイルをロウ漬けしハウリング防止をしている。
ペグ:シャーラーミニ。
テンションピン:1つ。高めに設定。チューニングの狂いを減らすため。
ナット:ブラス。溝は深く幅広く、油をさしている。弦との摩擦力を小さくしチューニングの狂いを減らすため。
ブリッジ:1958年(or1961年)のオールドストラトのブリッジ。スチール製。 プレスサドル。フローティングさせていない。
      1stアルバムのジャケットを見るとサドルがティアドロップ型のブラス製になっているが、レコーディングでは
      どちらのサドルが使われたかは不明。個人的にはプレスサドルと思う。
フレット:ギブソン・ラージ。先が尖るよう自分で削って、自分で取り付け。
回路:ボリューム(ギブソンの500K)とPUを直。トーンコントロールは無し。
:Fenderの純ニッケル製 XL-150 (009-040)。この頃売っていない。
  弦は10分位ゆでて十分伸ばしてから張っていた。弦高は高めらしいが不明。
  チューニングは半音下げ(小さなことのようでサウンドに大きく影響する)。
テンションスプリング:3本を小の字がけ。
ピック:Fenderミディアム0.71mm。よく親指と中指で持っている。


デストロイヤー
 1stアルバムでは、このギターの他、Running with the devil, You really got me, Feel your love tonight,On fire で、 イバニーズのデストロイヤー(エクスプローラータイプ)を使っている。よく聞くと、デストロイヤーの方が図太い音がしており、 本人もこのギターの音を気に入っていた。 1stのレコーディングの後、ブリッジ近くをチェンソーでカットしてしまったため、いい音が出なくなってしまった。
 ボディ材は当初コリーナと言われていたが、Ibanezはこの時代コリーナ材を使っておらず、アッシュかセンと言うのが濃厚だ。エディは"Korina Finish"という広告文句に引っ張られたのではないかと言われている。 1976年の広告(*) だとアッシュになっている。70年代半ばの日本国産ギターはセンが主流で、アッシュと全く違って軽く音も柔らかい。 Eddieが入手したのはどちらなのか、これはもう少し調査が必要だ。 音的にはアッシュの固い音よりセンの柔らかい音のような気がするのだが…。
 PUについては、オリジナルのSuper70か、 PAF(リワイヤしたかは不明だがおそらくしていると推測する)かは議論の的であるが、本人はPAFと述べている(Player1996年8月号)。
 1stアルバムの前後の写真を時系列的に並べてみる。
(1)1stアルバム前。カバーが付いている。Super 70と思われる。
(2)プロモビデオ。カバーなしの黒いPUになっている。これが録音時に使ったPAFと思われる。
(3)1978年来日時。再びカバー付き。この時のインタビューでエディはこう答えている。 「ピックアップはどこのメーカーか忘れたけど、とにかく自分で探して組み込んだんだ。やっぱりストラトのピックアップと同じで、 サンタ・バーバラにいる専門家に頼んでコイルをリワイヤしてもらったカスタム・メイドなんだよ。」

 しかし2つのギターの音の違いは、言われてみて何となくわかる位で、初期EVHの音のカギはアンプとエフェクターにあるように思う。


アンプ編(オールドマーシャル) *

ヘッド:1967年 SUPER LEAD100 (Serial No.12301)
ボトム:セレッションとJBLのコンビネーション


ヘッド * *
 1967年と古く、しかもPlexiグラスのレイダウントランス(トランスが横になっている)という今やOld Marshallの中でも特に貴重で高価なものだ。Eddieが売れっ子になる前にPasadena Rose Palaceというライブハウスでハウスアンプとして使われていた。なお1stアルバムでは2台のヘッドを使ったと述べている(ヤングギター1978年9月号インタビュー)。2台目の方の詳細は不明。

真空管
 1974年から1990年までEddieのギター・テクをしていたRudy Leirenによれば、パワー管はSylvania(アメリカ製)の6CA7/EL34とのこと。バイアスについては、本人は目一杯上げているとコメントしているが、詳細は不明。プリ管については詳細な情報はないが上記写真からSylvania 12AX7WAではないかと言う人もいる。

ホゼによる改造はあったのか?
 これもよく分からない。本人はデビュー当時、ホゼに改造してもらった、と言っているが、後に基本的にストック(大きな改造は無し)だと述べている。Eddieのマーシャルがへたってきたのを修復したオランダ人のアンプテクもストックだと述べている。でも、ストックマーシャルでどうすればあの1stアルバムの音を出せるのだろうか? 改造があったという方が納得できるが…。 エディのアンプの中を見たという人の証言はこちら
 ところで、上記写真および2ndアルバムレコーディング時の写真を見るとアンプ背面左側に意味不明のネジないしは白い突起のようなものが見える。諸説あるが、マスターボリュームらしい。元々ライブハウスのアンプだったことを考えれば、最初から付いていたとも考えられる。いずれにせよ詳細は不明。

変圧器
 変圧器を使ってアンプの電圧を上げたり下げたりしていた。初期のインタビューでは「アンプをオーバードライブさせるために140ボルト位まで上げる」と言っている。160ボルトと言っている時もある。しかし、すぐ後に「90ボルトにしている」とも述べている。筆者自身も、150ボルト位まで上げてほんのわずか試してみたことがあるが、若干音量が大きくなった位で、歪みの方はたいして変わらなかった。90ボルトだと少し音量が下がって、音も多少マイルドな感じになる。しかし90ボルトで真空管が飛ぶだろうか?デビュー当時、すぐに真空管を飛ばしていたことを考えると、1stアルバムでは本当に140ボルト位上げていたものと思われる。
 なお専門家によれば、これはアンプには非常によくないことでやらない方がいいとされている。

セッティング
 フロントパネルの全てのつまみをフルテンにしている。インプットジャックは左上。

スピーカー
 1stアルバムでは、右図のように「2台のヘッドと2台のコンビネーションキャビネットを使った」と述べている(ヤングギター1978年9月号インタビュー)。コンビネーションキャビネットは、右図のように4発のスピーカーのうち2発がCelestionのGreenback(G12M-25かG12H-30かは不明だが多分G12M-25)、もう2発はJBLのD-120となっている。*
 Greenbackは、G12T-75やVintage-30など他のCelestionよりも乾いた密度を感じる歪みがする。JBL D-120の方は昔のフェンダーアンプで使われておりEVHはクリーンな音が出ると言っている。
 EVH初期のあの歪みは、このコンビネーションキャビネットによる要素が大きいのでは、と思う。いずれも古き時代のSPなので、ヘッドからの100ワットを超える信号には入力許容量がきつく、それでギリギリの音が出ているのではないだろうか?SPもよく飛ばしていたそうだから。

 なお、デビュー時のデモビデオだと、キャビネットカバーが剥がされている。誰かが真似したところ、 音が変わってしまい後悔したようだ。1stのレコーディング時点でもカバーを剥がしてあったようだが不明である。 2ndはスタジオでの写真(右も)があり、キャビネットカバーが剥がされたものを使っている。


エフェクター編

 使っているエフェクターは次の通りだが、エフェクターについても不明な点が多い。本人は「It was that first homemade guitar with a cable going through an MXR flanger, then a Phase 90, and then an Echoplex, and straight into the Marshall head.」、「フランジャー、フェイザー、エコープレックスの順」(ロッキンf1979年11月号)と言っている。
 資料は、ミュージックライフ1978年8月号、ヤングギター1978年9月号、プレイヤー誌1996年8月号、Neil Zlozowerの写真を参考にした。エフェクターのイラストはguitar007という人が作ってくれた。
*
MXR Flanger(M-117)
 Ain't talk about loveやUnchainedのイントロに使われている。ギターから30フィート(10m)あるシールドの後、最初に接続されるエフェクターだ。 *
 つまみのセッティングは不明。本人の言う通りギターとアンプの間につないで、色々つまみのセッティングを変えてみてもあの過激な音にならない。「なぜ、うねりのちょうどよい所で具合良くフランジングがかかるのか?」という質問に対し、本人は「いつも運がいいんだよ」と同インタビューで答えている。色々な人の意見や筆者が試してみた感じでは、Manual 10:00, Width 10:00, Speed 11:00, Regen 17:00(最大)  辺りではないかと思う。
 なお、フランジャーはノイズを抑えゲイン落ちしないようカスタマイズされている。

MXR Phase90
 スクリプト(筆記体)タイプ。フランジャーの次に接続される。つまみは最も左に絞っている。1stアルバムのソロの多くにPhaserがかけられている。Phase 90は初期EVHサウンドの重要なつぼの1つで、しかも比較的簡単にあの音に近づけるエフェクターだ。Phase 90の後はエコープレックスに繋がっていく。

MXR 6band EQ
 フロントステージのエフェクトボードに置いてあるGraphic EQ。図のように馬蹄系でミッドブーストさせている。ライブではMXRの代わりにBOSSのGE-10を使っている時もある。
 ただ、この写真(EQのインプットが繋がれていない)を見る限り、フロントステージに置かれたEQはメインの信号系統ではないことが分かる。2005年2月に発行された『天才ギタリストエドワード・ヴァン・ヘイレン』の中の写真を見ても、MXRのEQのインプットはつながれていない。おそらくバックアップ用、ないしはメイン系統でないセットを使うときにギターから接続されるものと思われる。いずれにせよ不可解なEQだ。
 このEQの後はボックス1に繋がっていく。

ボックス1
 トーンベンダーを改造したスイッチボックスで「1」と朱書きされている。これが何か不明。図のようにEQのOUTとつながっているが、左の2本のシールドがどこにつながっているのか不明。さらに、左の一番下のつながれていない短いシールドが不可解だ。ボックス2に行くのか? 1996年8月号プレーヤー誌の中とじ写真ではこの短いシールドはやはりどこにも繋がれていないように見える。
 「アンプが飛んだ時に別のアンプに切りかえるスイッチがある」と言っているので、きっとそれではないかと思う。

ボックス2
アルミ弁当箱型のボックスで「2」と朱書きされている。どこにもつながっていないので、これもよく分からない。また「ボックス1」との関連も分からない。

*
Maestro Echoplex (EP3)2台
 2台をパラレルに使っているか(直列だとノイズがひどくなるし、2台のセッティングは同じように見える)、1台は予備だと思う。しかし、ステージ上のエフェクトボードにも2つのフットスイッチがあるし、本人は「2台はセッティングを変えて使い分けている」と言ったという話もあり、詳細は不明。なお、本人は「エコープレックスは一度に一台しか使わない」と言っている。
 セッティングに関しては、入手可能な写真では、すべてEchoplexの電源(最左のリピート回数つまみと兼用)がオフになっているし、ドライバーで調整する小さな穴のところは知る由もないので、詳細は不明。エコータイムの目盛は12の位置であることが分かる。
 Echoplexの後は、次のBOSS GE-10につながっている。なお、初来日時のこの部分の写真は2枚あり、1枚目の写真では明らかにGE-10につながっているが、もう1枚の写真だとGE-10をつなげていないようにも見える。
 ところで、このEchoplexもEVHサウンドの1つのカギではないかと思っている。エコーエフェクトとしての機能よりも、通すだけで原音が太くなりゲインもほんの少し増えた感じになる機能だ。EddieがBrian MayとセッションしたStar Freetについて、Brian Mayはインタビューで「EddieはオールドマーシャルのヘッドとEchoplexを持ってスタジオに来た」と言っている。また、マイケル・ジャクソンのBeat itのソロ部分について、VHのオフィシャルページの解説にも「An old Marshall amplifier and cabinet were used, (though not his trusty Super Lead) and the solos were played on Edward's now-retired Charvel Frankenstrat along with an Echoplex.」と書かれている。実際どちらの曲を聴いてもエコーとして使われているようには聞こえない。ただ、両曲の音もいい音ではあるが、しかしそれでもなお1stアルバムのあのしびれる爆音ではない。1stアルバムでEQも使われたかどうかを知りたい。
 なお、アンプヘッドの前にエコーを持ってくると全体の音は良くなるが、ディレイ音は汚くなる。1stアルバムを聞いても、ギター側でかけているディレイはほとんどないように感じる。アルバム全体での広がりのあるギターのディレイ音はEchoplexではなく、ミキサーで処理している。「a slight 10 millisecond delay added to the dry tone with a Evantide, and a hard pan from the output of an EMT plate reverb.」

BOSS GE-10
 Graphic EQ。Echoplexの直後につながっている。図のようにゲインと中域がブーストされている。しかし、Echoplexのところで述べた2枚の写真を見較べると、同じ日の同じ場所で同じカメラマンが撮影した写真なのに、GE-10のセッティングもまたどういう訳か少し異なっているように見える。
 このEQからはフットスイッチが出ていないので、常にオンになっていると考えられる。本人は「長いシールドを使うとハイ落ちするので、ペダルとアンプの間にラインをブーストさせるEQを使っている」と述べている。

Univox EC-80 *
 テープエコー。爆弾ラックに入っている。このEC-80がどこから接続されてどこに行くのかが判らない。
 EC-80というテープエコーはカセット式テープを使ったもので決して性能がいいテープエコーではない。中古楽器屋で非常によごれたEC-80を見つけたことがあるが「ノイズがひどいし、おすすめしない」と言われた。
 Eddieはこのモーターを換えて遅いディレイをかけられるようにしてEruptionの最後に使っている( 本人のインタビュー(80年4月))。これまでこのサイトでは、Eruptionの最後のダイブはミキシング時の加工と推測していたが違ったようだ。根拠は、
1) Eruptionのミキシング加工前の音源が公開された。こちらYouTubeの01:44~03:32
2) YouTube上でEC-80を使って再現した人が現れた。こちら
 ところで、2ndアルバムのレコーディング時の写真にケーブルが繋がった2台のEC-80が写っているが、どうしてなのだろうか? どの曲にも使われていないようなのだが…。


レコーディング編

書かれたものや写真による客観的な情報が全くないので何とも言えないが、次のように言われている。

- マイク(SM57)とスピーカーの距離は1.5~2インチ。
- 1stの録音では Universal Audio Consoleが使われた。
- 2ndの録音では neve console が使われた。


筆者の推測編

上記の様々な情報から、こうではないかと筆者が推測するダイアグラムは、

1stアルバムのレコーディング時
Guitar → Flanger → Phaser → Echoplex → GE-10 → EC-80(発振の時以外はバイパス)→ Marshallヘッド(2台、変圧器で電圧を上げる)→コンビネーションキャビネット(2台)。
SURE SM57マイク2本(1本はコーンの中心に、もう1本は斜めから)で録音。

ライブの時
メインセット:Guitar → Flanger → Phaser → Echoplex → GE-10 → EC-80(発振の時以外はバイパス)→ Marshallヘッド(複数)

別系統(予備?)用セット:Guitar → MXR 6 Band EQ → スイッチボックス1(ラインセレクター)→ Echoplex? → アンプ


おすすめリンク

オフィシャルHP
エディインタビュー集
Classic Van Halen.com(写真・動画・サウンドファイルが豊富。Yngwieの輝ける空、Lynchのパナマまであった。)
5150FAN (JKさんのサイト。エディーフリークの為のコーナー&専用BBSあり。)
BBS in Plexi Palace(アメリカのサイトで詳しい)
Mr.VHoholic's Clips この人のサウンドクリップが今のところ一番「近い」と思う。


掲示板

エディのサウンドやプレイについて何でもどうぞ。⇒ 2022年8月1日に全部消えてしまいました…
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その他

エディのインタビューが載っている雑誌
サウンドクリップ(自分の色々な試み)