譲渡権



自分の所有物を他人に譲渡することができる権利です。著作権者は、その著作物の、実演家は、 その実演を録画又は録音した物の、レコード製作者は、そのレコードの原作品又はその複製物を人に譲渡することができます。

この譲渡権の規定趣旨は、大量に製造された海賊版の販売を差し止めるために規定されたものと言わ れています。従って、そうではない譲渡については、第2項で除外されています。

第26条の2、第95条の2、第97条の2に定める譲渡の対象は「物」であって、権利(著作権そのもの)では ありません。

この「譲渡権」は、原作品にしろ複製物にしろ、権利者が最初に譲渡するときにだけその権利が及び、 それを譲り受けた人がその被譲渡物を再譲渡するかどうかは、譲渡を受けた人が決めることができ、元の権利者の譲渡権は及びません。 そのため、BOOK OFFに代表される中古本、中古CD・DVD、中古ゲームソフト等の中古著作物の売買ビジネスを適法に行うことができ ます。

このように最初に譲渡する時だけ権利がおよび、権利を行使した物に対して権利がおよばないことを 「権利を消尽した」といいます。譲渡権の権利消尽については、「中古ビデオ裁判」「中古ゲームソフト事件」で確定しています。 「中古ビデオ」も「中古ゲームソフト」も「映画の著作物」であるということ、及び「映画の著作物」についてだけ認められている 「頒布権」(消尽しない)の適用について争ったものです。詳細は、映画の著作物の解説をご覧ください。

(譲渡権)
第二十六条の二  著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。以下この条において同じ。)をその原作品又は複製物 (映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。以下この条において同じ。) の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。
2 前項の規定は、著作物の原作品又は複製物で次の各号のいずれかに該当するものの譲渡による場合には、適用しない。
 一 前項に規定する権利を有する者又はその許諾を得た者により公衆に譲渡された著作物の原作品又は複製物
 二 第六十七条第一項(著作権者不明等の場合における著作物の利用)若しくは第六十九条(商業用レコードへの録音等) の規定による裁定又は万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律 (昭和三十一年法律第八十六号)第五条第一項の規定による許可を受けて公衆に譲渡された著作物の複製物
 三 前項に規定する権利を有する者又はその承諾を得た者により特定かつ少数の者に譲渡された著作物の原作品又は複製物
 四 国外において、前項に規定する権利に相当する権利を害することなく、又は同項に規定する権利に相当する権利を有する 者若しくはその承諾を得た者により譲渡された著作物の原作品又は複製物

(譲渡権)
第九十五条の二  実演家は、その実演をその録音物又は録画物の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。
2 前項の規定は、次に掲げる実演については、適用しない。
 一 第九十一条第一項に規定する権利を有する者の許諾を得て録画されている実演
 二 第九十一条第二項の実演で同項の録音物以外の物に録音され、又は録画されているもの
3 第一項の規定は、実演(前項各号に掲げるものを除く。以下この条において同じ。)の録音物又は録画物で次の各号の いずれかに該当するものの譲渡による場合には、適用しない。
 一 第一項に規定する権利を有する者又はその許諾を得た者により公衆に譲渡された実演の録音物又は録画物
 二 第一項に規定する権利を有する者又はその承諾を得た者により特定かつ少数の者に譲渡された実演の録音物又は 録画物
 三 国外において、第一項に規定する権利に相当する権利を害することなく、又は同項に規定する権利に相当する権利 を有する者若しくはその承諾を得た者により譲渡された実演の録音物又は録画物

(譲渡権)
第九十七条の二  レコード製作者は、そのレコードをその複製物の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。(br> 2 前項の規定は、レコードの複製物で次の各号のいずれかに該当するものの譲渡による場合には、適用しない。
 一 前項に規定する権利を有する者又はその許諾を得た者により公衆に譲渡されたレコードの複製物
 二 前項に規定する権利を有する者又はその承諾を得た者により特定かつ少数の者に譲渡されたレコードの複製物
 三 国外において、前項に規定する権利に相当する権利を害することなく、又は同項に規定する権利に相当する権利を有する者若しくはその承諾を得た者により譲渡されたレコードの複製物

一方、著作財産権及び著作隣接権の権利そのものも譲渡することができます。著作権の譲渡については、 第61条に、著作隣接権の譲渡については、第103条にその規定があります。

(著作権の譲渡)
第六十一条  著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。
2 著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、 これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。

(著作隣接権の譲渡、行使等)
第百三条  第六十一条第一項の規定は著作隣接権の譲渡について、第六十二条第一項の規定は著作隣接権の消滅について、 第六十三条の規定は実演、レコード、放送又は有線放送の利用の許諾について、第六十五条の規定は著作隣接権が共有に係る場合に ついて、第六十六条の規定は著作隣接権を目的として質権が設定されている場合について、それぞれ準用する。この場合において、 第六十三条第五項中「第二十三条第一項」とあるのは、「第九十二条の二第一項、第九十六条の二、第九十九条の二又は第百条の四」 と読み替えるものとする。