著作権・著作隣接権の保護期間



著作権及び著作隣接権の保護期間は映画の著作物を除いて50年、映画の著作物は70年という数字がすぐ浮かびますが、保護期間の 開始時期、新法施行前に公表された著作物の取扱い、戦前に公表された著作物の取扱い等必ずしも簡単ではなく、つい先日も映画 「シェーン」の保護期間についての最高裁判決が出されたばかりです。

(保護期間の原則)
第五十一条  著作権の存続期間は、著作物の創作の時に始まる。
2 著作権は、この節に別段の定めがある場合を除き、著作者の死後(共同著作物にあつては、最終に死亡した著作者の死後。 次条第一項において同じ。)五十年を経過するまでの間、存続する。

著作権の保護期間は原則として、創作の時から始まり、著作者の死後50年間となっています。

(無名又は変名の著作物の保護期間)
第五十二条  無名又は変名の著作物の著作権は、その著作物の公表後五十年を経過するまでの間、存続する。ただし、その存続期間 の満了前にその著作者の死後五十年を経過していると認められる無名又は変名の著作物の著作権は、その著作者の死後五十年を経過 したと認められる時において、消滅したものとする。
2 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当するときは、適用しない。
 一 変名の著作物における著作者の変名がその者のものとして周知のものであるとき。
 二 前項の期間内に第七十五条第一項の実名の登録があつたとき。
 三 著作者が前項の期間内にその実名又は周知の変名を著作者名として表示してその著作物を公表したとき。

著作物が実名で公表されていれば、著作者の死後50年間保護されるわけですが、無名又は変名であって、誰の著作物かわからないものの 保護期間は、公表後50年となります。但し、著作者の死後公表された著作物であって、公表後50年経過前に著作者が死亡してから50年経過 していることが判明したときは、保護期間は著作者の死後50年となります。また、変名で公表した著作物であっても、著作者が誰であるか 明らかな場合は、著作者の死後50年間保護されます。また、著作物が実名で登録されている場合、著作者名が無名又は変名で公表された ものであっても著作者が死亡した後50年間保護されます。著作権が存続している期間において著作者が誰であるかが明らかになった場合も 同様です。

(団体名義の著作物の保護期間)
第五十三条 法人その他の団体が著作の名義を有する著作物の著作権は、その著作物の公表後五十年(その著作物がその 創作後五十年以内に公表されなかつたときは、その創作後五十年)を経過するまでの間、存続する。
2 前項の規定は、法人その他の団体が著作の名義を有する著作物の著作者である個人が同項の期間内にその実名又は周知の 変名を著作者名として表示してその著作物を公表したときは、適用しない。
3 第十五条第二項の規定により法人その他の団体が著作者である著作物の著作権の存続期間に関しては、第一項の著作物に 該当する著作物以外の著作物についても、当該団体が著作の名義を有するものとみなして同項の規定を適用する。

会社等団体名義の著作権の保護期間は、著作物の公表後50年(公表されなかった場合は創作後50年)となります。しかし、団体 名義の著作物であっても、保護期間中に、当該著作物の著作者が、著作者の実名又は周知の変名でその著作物を公表したときは、 当該著作者の死後50年間保護されます。職務上作成するプログラムの著作物の著作権の保護期間は、会社等団体が著作の名義 を有する著作物でない著作物であっても、当該著作物の公表後50年(公表しない場合は創作後50年)保護されます。

(映画の著作物の保護期間)
第五十四条 映画の著作物の著作権は、その著作物の公表後七十年(その著作物がその創作後七十年以内に公表されなかつた ときは、その創作後七十年)を経過するまでの間、存続する。
2 映画の著作物の著作権がその存続期間の満了により消滅したときは、当該映画の著作物の利用に関するその原著作物の著作権は、 当該映画の著作物の著作権とともに消滅したものとする。
3 前二条の規定は、映画の著作物の著作権については、適用しない。

映画の著作物の保護期間は、平成15年の改正法で50年から70年に延長されましたが、今年に入って映画の著作物の保護期間に ついての判決が相次いで出されたこと皆さんご存知のとおりです。法律が改正される場合、旧法と新法のどちらが適用されるのか附則 で規定されます。また、2003年1月21日、米国最高裁判所において著作権の保護期間の20年の延長が認められ、現在米国での著作権 保護期間は法人著作について公表後95年、個人については、死後70年となっています。

(附則)

(適用範囲についての経過措置)
第二条 改正後の著作権法(以下「新法」という。)中著作権に関する規定は、この法律の施行の際現に改正前の著作権法 (以下「旧法」という。)による著作権の全部が消滅している著作物については、適用しない。
2 この法律の施行の際現に旧法による著作権の一部が消滅している著作物については、新法中これに相当する著作権に関する規定は、 適用しない。
3 この法律の施行前に行われた実演(新法第七条各号のいずれかに該当するものを除く。)又はこの法律の施行前にその音が最初に 固定されたレコード(新法第八条各号のいずれかに該当するものを除く。)でこの法律の施行の際現に旧法による著作権が存するもの については、新法第七条及び第八条の規定にかかわらず、著作権法中著作隣接権に関する規定(第九十四条の二、第九十五条、 第九十五条の三第三項及び第四項、第九十七条並びに第九十七条の三第三項から第五項までの規定を含む。附則第十五条第一項 において同じ。)を適用する。

(著作物の保護期間についての経過措置)
第七条 この法律の施行前に公表された著作物の著作権の存続期間については、当該著作物の旧法による著作権の存続期間が 新法第二章第四節の規定による期間より長いときは、なお従前の例による。

新法が施行される前に著作権が消滅している著作物については、新法の下に著作権が復活することはありませんが、著作権が 残存しているものについては、新法がそのまま適用されます。旧著作権法下では、以下のとおり、著作物の保護期間は38年、映画の 著作物は33年、写真の著作物は、13年でした。また、附則第7条の規定により、旧法による保護期間が新法によるよりも長い場合は 旧法の規定によるとなっています。本サイトのTOPICS欄にありますように、本年(2007年)チャップリンの映画や七人の侍等の映画の 保護期間について東京地裁で判決が出されました。旧法では、実名の著作物の保護期間は死後38年、団体名義の著作物は33年と なっていました。新法では、映画の著作物は、公表後50年(改正後70年)ということで一本化されていますが、旧法では、個人名義か 団体名義かによって保護期間が大幅に異なるため保護期間をめぐって裁判で争われています。東京地裁は、チャップリン映画も 黒澤映画もチャップリン又は黒澤監督が映画の著作者であり、従って、著作者の死後38年間著作権は保護されるとしています。 「七人の侍」を例にとりますと、1954年に公表されていますから、旧法下では、1955年1月1日から38年間、すなわち、1992年12月31日 までが保護期間となりますが、保護期間の途中である1971年に新法が施行されましたので、新法施行時に著作権が残存している 「七人の侍」は12年プラスして、2004年12月31日まで保護されることになります。東京地裁の判決によりますと、「七人の侍」は、 団体名義の著作物ではなく、少なくとも黒澤明監督が著作者の一人であるから、黒澤監督が死亡した(1998年)後38年間保護される、 すなわち2036年まで保護されるとしました。これは、附則第7条の「旧法による著作権の存続期間が新法より長いときは、なお従前の 例による」という規定を適用したものと思います。思うに、旧法では、映画の著作物の著作者及び著作権者があいまいであるために、 それをはっきりさせようと、新法では第16条、第29条、第54条等の規定をおいたと思われるにも関わらず、新法で整理された考えを 考慮することなく判決を出されたことに違和感を覚えます。

旧法

第三条 【保護期間−生前発表著作物】
1 発行又ハ興行シタル著作物ノ著作権ハ著作者ノ生存間及其ノ死後三十年間継続ス
2 数人ノ合著作ニ係ル著作物ノ著作権ハ最終ニ死亡シタル者ノ死後三十年間継続ス

第四条 〔同前−死後公表著作物〕 著作者の死後発行又は興行したる著作物の著作権は発行又は興行のときより 三十年間継続す

第五条 〔同前−無名・変名著作物〕 無名又は変名著作物の著作権は発行又は興行のときより三十年間継続す 但し其の期間内に著作者其の実名の登録を受けたるときは第三条の規定に従う

第六条 【同前−団体著作物】
官公衙学校社寺協会会社其ノ他ノ団体ニ於テ著作ノ名義ヲ以テ発行又ハ興行シタル著作物ノ著作権ハ発表又ハ興行ノトキヨリ三十年間 継続ス

第九条 【期間の計算】
前六条ノ場合ニ於テ著作権ノ期間ヲ計算スルニハ著作者死亡ノ年又ハ著作物ヲ発行又ハ興行シタル年ノ翌年ヨリ起算ス

第二十二条ノ三 【映画の著作権】
1 活動写真又ハ之ト類似ノ方法ニ依リ製作シタル著作物ノ著作者ハ文芸、学術又ハ美術ノ範囲ニ属スル著作物ノ著作者トシテ本法ノ 保護ヲ享有ス
2 其ノ保護ノ期間ニ付テハ独創性ヲ有スルモノニ在リテハ第三条乃至第六条及第九条ノ規定ヲ適用シ之ヲ欠クモノニ在リテハ 第二十三条ノ規定ヲ適用ス

第二十三条 【保護期間−写真著作物】
1 写真著作権ハ十年間継続ス
2 前項ノ期間ハ其ノ著作物ヲ始メテ発行シタル年ノ翌年ヨリ起算ス若シ発行セサルトキハ種版ヲ製作シタル年ノ翌年ヨリ起算ス
3 写真術ニ依リ適法ニ美術上ノ著作物ヲ複製シタル者ハ原著作物ノ著作権ト同一ノ期間内本法ノ保護ヲ享有ス但シ当事者間ニ契約 アルトキハ其ノ契約ノ制限ニ従フ

第五十二条
1 第三条乃至第五条中三十年トアルハ演奏歌唱ノ著作権及第二十二条ノ七ニ規定スル著作権(【録音物の著作権】音ヲ機械的ニ 複製スルノ用ニ供スル機器ニ他人ノ著作物ヲ適法ニ写調シタル者ハ著作者ト看倣シ其ノ機器ニ付テノミ著作権ヲ有ス )ヲ除ク外当分 ノ間三十八年トス
2 第六条中三十年トアルハ演奏歌唱ノ著作権及第二十二条ノ七ニ規定スル著作権ヲ除ク外当分ノ間三十三年トス
3 第二十三条第一項中十年トアルハ当分ノ間十三年トス

旧法に基づく著作権の存続期間をまとめますと以下のようになります。
@ 実名の著作物〜発行又は興行した時の翌年から死後38年間
A 著作者の死後発行又は興行した著作物〜発行又は興行した時の翌年から38年間
B 無名又は変名の著作物〜発行又は興行した時の翌年から38年間(但し、期間内に実名登録した場合は死後38年間)
C 団体名義で発行又は興行した著作物〜発行又は興行した時の翌年から33年間
D 独創性を有する映画の著作物〜@乃至Cと同様
E 独創性を欠く映画の著作物(ニュース映画等)〜発行した年の翌年から13年間
F 写真の著作物〜発行した年の翌年から13年間(未発表の場合創作した年の翌年から13年間)
G 演奏歌唱の著作権及び録音物(レコード)〜著作者の死後30年間(団体名義は発行又は興行後30年)

附則

(著作隣接権についての経過措置)
第十五条 この法律の施行前にした旧法の著作権の譲渡その他の処分で、この法律の施行前に行われた実演又はこの法律の 施行前にその音が最初に固定されたレコードでこの法律の施行の日から新法中著作隣接権に関する規定が適用されることと なるものに係るものは、新法のこれに相当する著作隣接権の譲渡その他の処分とみなす。
2 前項に規定する実演又はレコードでこの法律の施行の際現に旧法による著作権が存するものに係る著作隣接権の存続期間は、 旧法によるこれらの著作権の存続期間の満了する日が新法第百一条の規定による期間の満了する日後の日であるときは、 同条の規定にかかわらず、旧法による著作権の存続期間の満了する日(その日がこの法律の施行の日から起算して五十年を経過 する日後の日であるときは、その五十年を経過する日)までの間とする。
3 この法律の施行前に第一項に規定する実演又はレコードについてした旧法第十五条第一項の著作権の登録に関する処分 又は手続は、これに相当する新法第百四条の著作隣接権の登録に関する処分又は手続とみなす。
4 附則第十条第一項及び第十二条第二項の規定は、第一項に規定する実演又はレコードについて準用する。

附則第15条第2項において、新法施行前に著作権が存する実演又はレコードの存続期間が新法による期間満了日後の日 であるときは、旧法による期間満了の日まで存続期間は継続するが、新法施行の日から50年を経過する日を超えないから、 旧法下で発行又は興行されたレコード又は実演の最長の保護期間は新法施行日である1971年1月1日から50年経過した日 である、2020年12月31日までとなります。

以上を踏まえて、旧法下で発行又は興行された著作物に関する著作権の存続期間をとりまとめますと、以下のとおり となります。

@ 無名又は変名(実名登録したものを除く)の著作物は、1932年(昭和7年)を含むそれ以前に発行又は興行されたものは 新法施行前に著作権は切れています。
A 団体名義の著作物は、1937年(昭和12年)を含むそれ以前に発行又は興行されたものは新法施行前に著作権は切れています。
B 写真の著作物は、1957年(昭和32年)以前に発行されたものは新法施行前に著作権は切れています。
C 実名の著作物は、1932年以前に死亡した場合、新法施行前に著作権は切れています。
D 実名の著作物で、著作者が1933年を含むそれ以降に死亡した場合、新法が適用され、死亡した年の翌年から50年経過した時に 著作権は切れます。
E 独創性を有する映画の著作物で著作者が団体名義でなく、著作者が1933年を含むそれ以降に死亡した場合、新法が適用され、 死亡した年の翌年から50年経過した時に著作権は切れます。
F 独創性を有する映画の著作物で著作者が団体名義の場合、1937年以前に発行又は興行されたものは新法施行前に 著作権は切れています。
G 1954年を含むそれ以前に公開された映画の著作物は、映画の著作物の保護期間が50年から70年に延長された改正法が施行される 2004年1月1日より前に保護期間が切れています。従って、1954年を含むそれ以降に公開された映画の著作物は、公開日の属する 年の翌年から70年間著作権が存続します。
H 写真の著作物及びニュース映画のような独創性を欠く映画の著作物は、1957年を含むそれ以前に公開されたものは、新法が 施行される前に著作権は切れています。
I 演奏・歌唱、及びレコードの著作権は、著作者の死亡した日の属する年の翌年1月1日から30年経過した時に著作権は切れます。
J 演奏・歌唱、及びレコードの著作権で団体名義のものは、発行又は興行した日の属する年の翌年から30年経過した時に著作権 が切れるため、1940年を含むそれ以前に発行又は興行されたものは、新法施行前に著作権は切れています。
K 第二次世界大戦前に国内において発行又は興行された外国の著作物については、保護期間について戦時加算(約10年から12年) がされますので注意が必要です。

(継続的刊行物等の公表の時)
第五十六条 第五十二条第一項、第五十三条第一項及び第五十四条第一項の公表の時は、冊、号又は回を追つて公表する著作物 については、毎冊、毎号又は毎回の公表の時によるものとし、一部分ずつを逐次公表して完成する著作物については、最終部分の 公表の時によるものとする。
2 一部分ずつを逐次公表して完成する著作物については、継続すべき部分が直近の公表の時から三年を経過しても公表されないときは、 すでに公表されたもののうちの最終の部分をもつて前項の最終部分とみなす。

所謂、連載物に関する保護期間の取扱いに関する規定です。4コマ漫画のように公表の都度話が完結しているものは、一回一回が 公表の時になりますが、例えば新聞に連載される小説は、一話一話が完結するものではなく、最終回の連載が終わってはじめて一つの 小説として完成しますので、そのような場合は、最終話が掲載された時が公表された時となり、その時点から保護期間が計算されます。 連載漫画の場合、連載漫画の登場人物(キャラクター)の保護期間は当該キャラクターが最初に公表されたときから50年という 判決が最高裁で下されました(ポパイ事件、H9.7.17)。すなわち、あるキャラクターの2回目以降の登場は、最初に登場した キャラクターの二次的著作物にすぎないという考えです。従って、継続的刊行物に関する公表のときとは、その公表された刊行物 そのもののことであり、その刊行物の中の登場人物の個々のキャラクターに関する保護期間は当該キャラクターが最初に登場した ときから保護期間が開始されるということですので注意が必要です。著作権法に基づく保護期間が切れた後のキャラクターの保護の 可能性として商標法及び不正競争防止法があります。

(保護期間の計算方法)
第五十七条 第五十一条第二項、第五十二条第一項、第五十三条第一項又は第五十四条第一項の場合において、著作者の死後 五十年、著作物の公表後五十年若しくは創作後五十年又は著作物の公表後七十年若しくは創作後七十年の期間の終期を計算するときは、 著作者が死亡した日又は著作物が公表され若しくは創作された日のそれぞれ属する年の翌年から起算する。

保護期間の起算は、死亡日、公表日、又は創作日の属する年の翌年1月1日から行うことになります。

(保護期間の特例)
第五十八条 文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約により創設された国際同盟の加盟国、著作権に関する世界知的所有権 機関条約の締約国又は世界貿易機関の加盟国である外国をそれぞれ文学的及び美術的著作権の保護に関するベルヌ条約、著作権に 関する世界知的所有権機関条約又は世界貿易機関を設立するマラケシュ協定の規定に基づいて本国とする著作物(第六条第一号に 該当するものを除く。)で、その本国において定められる著作権の存続期間が第五十一条から第五十四条までに定める著作権の存続 期間より短いものについては、その本国において定められる著作権の存続期間による。

日本が批准している条約の締約国の著作権の存続期間が短い場合は、当該国の著作物の日本における保護期間は、その国の 保護期間と同様となります。

また、保護期間を計算するときに考慮しなければならないものが、戦時加算と言われるものです。これは、第二次世界大戦が 行われていた期間は、実質的に著作権の保護が受けられなかったのだから、戦前から存在している著作物の保護期間については 戦争で保護が受けられなかった期間を保護期間に加算しましょうというものです。その内容は以下のとおりとなっています。

連合国及び連合国民の著作権に関する法律

(著作権の存続期間に関する特例)
第四条 昭和十六年十二月七日に連合国及び連合国民が有していた著作権は、著作権法に規定する当該著作権に相当 する権利の存続期間に、昭和十六年十二月八日から日本国と当該連合国との間に日本国との平和条約が効力を生ずる日 の前日までの期間(当該期間において連合国及び連合国民以外の者が当該著作権を有していた期間があるときは、 その期間を除く。)に相当する期間を加算した期間継続する。
2 昭和十六年十二月八日から日本国と当該連合国との間に日本国との平和条約が効力を生ずる日の前日までの期間に おいて、連合国又は連合国民が取得した著作権(前条の規定により有効に取得されたものとして保護される著作権を 含む。)は、著作権法に規定する当該著作権に相当する権利の存続期間に、当該連合国又は連合国民がその著作権を 取得した日から日本国と当該連合国との間に日本国との平和条約が効力を生ずる日の前日までの期間(当該期間において 連合国及び連合国民以外の者が当該著作権を有していた期間があるときは、その期間を除く。)に相当する期間を加算 した期間継続する。

上記は著作権ほ保護期間に関する戦時加算に関する規定です。具体的には、以下に定める国の著作物に関する著作権の 存続期間はそれぞれ以下に示すとおりとなっています。
・米、英、豪、加、仏、スリランカ、ニュージランド、パキスタン〜3794日
・ブラジル〜3816日
・オランダ〜3844日
・ノルウェー〜3846日
・ベルギー〜3910日
・南アフリカ〜3929日
・ギリシャ〜4180日
・レバノン〜4413日

(著作者人格権の一身専属性)
第五十九条 著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない。

著作者人格権は著作者と一体のもであるため、その保護期間も著作者が死亡(法人の場合は解散) したときに消滅します。

(著作者が存しなくなつた後における人格的利益の保護)
第六十条 著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなつた後においても、著作者が存していると したならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。ただし、その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他 によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合は、この限りでない。

著作者人格権の保護期間は著作者が死亡した時に消滅しますが、著作者死亡後であっても、生存していたとすれば 著作者人格権の侵害となる行為はしてはならないので、実質的には、死後も保護されることになります。

(相続人の不存在の場合等における著作権の消滅)
第六十二条 著作権は、次に掲げる場合には、消滅する。
 一 著作権者が死亡した場合において、その著作権が民法(明治二十九年法律第八十九号)第九百五十九条(残余財産の国庫への 帰属)の規定により国庫に帰属すべきこととなるとき。
 二 著作権者である法人が解散した場合において、その著作権が民法第七十二条第三項(残余財産の国庫への帰属)その他 これに準ずる法律の規定により国庫に帰属すべきこととなるとき。
2 第五十四条第二項の規定は、映画の著作物の著作権が前項の規定により消滅した場合について準用する。

著作者が死亡し、又は法人が解散し、その財産を相続又は承継するものがいない場合は、著作権は消滅 します。

(実演、レコード、放送又は有線放送の保護期間)
第百一条 著作隣接権の存続期間は、次の各号に掲げる時に始まる。
 一 実演に関しては、その実演を行つた時
 二 レコードに関しては、その音を最初に固定した時
 三 放送に関しては、その放送を行つた時
 四 有線放送に関しては、その有線放送を行つた時
2 著作隣接権の存続期間は、次に掲げる時をもつて満了する。
 一 実演に関しては、その実演が行われた日の属する年の翌年から起算して五十年を経過した時
 二 レコードに関しては、その発行が行われた日の属する年の翌年から起算して五十年(その音が最初に固定された日の属する年の 翌年から起算して五十年を経過する時までの間に発行されなかつたときは、その音が最初に固定された日の属する年の翌年から起算して 五十年)を経過した時
 三 放送に関しては、その放送が行われた日の属する年の翌年から起算して五十年を経過した時
 四 有線放送に関しては、その放送が行われた日の属する年の翌年から起算して五十年を経過した時

実演、レコード、放送、有線放送の保護期間は、それぞれ、実演、音の固定、放送、有線放送を行った時の翌年1月1日から50年間 となります。

(実演家人格権の一身専属性)
第百一条の二 実演家人格権は、実演家の一身に属し、譲渡することができない。

実演家人格権も実演家の一身に属するため、実演家が死亡した時に消滅します。

(実演家の死後における人格的利益の保護)
第百一条の三 実演を公衆に提供し、又は提示する者は、その実演の実演家の死後においても、実演家が生存しているとしたならば その実演家人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。ただし、その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその 行為が当該実演家の意を害しないと認められる場合は、この限りでない。

しかしながら、実演家が死亡した後であっても、実演家が生存していたとするならば実演家の人格権を侵害する行為は禁止されます ので、実演家人格権は実演家が死亡した後も実質的には保護されることになります。

(附則)
(法人名義の著作物等の著作者についての経過措置)
第四条 新法第十五条及び第十六条の規定は、この法律の施行前に創作された著作物については、適用しない。

職務著作と映画の著作物の著作者の規定は新法前に創作された著作物については適用されません。

(映画の著作物等の著作権の帰属についての経過措置)
第五条 この法律の施行前に創作された新法第二十九条に規定する映画の著作物の著作権の帰属については、なお従前の 例による。
2 新法の規定は、この法律の施行前に著作物中に挿入された写真の著作物又はこの法律の施行前に嘱託によつて創作された肖像 写真の著作物の著作権の帰属について旧法第二十四条又は第二十五条の規定により生じた効力を妨げない。

映画の著作物の著作権の帰属については新法で明確に規定されましたが、新法施行前に作られた映画については、旧法の 規定が適用されるという規定ですが、そのため保護期間について裁判で争われています。

(翻訳権の存続期間についての経過措置)
第八条 この法律の施行前に発行された著作物については、旧法第七条及び第九条の規定(*)は、なおその効力を有する。

*(旧法)
第七条 〔同前−翻訳権〕 著作権者原著作物発行のときより十年内に其の翻訳物を発行せざるときは其の翻訳権は消滅す 前項の期間内に著作権者其の保護を受けんとする国語の翻訳物を発行したるときは其の国語の翻訳権は消滅せず
第九条 〔期間の計算〕 前六条の場合に於て著作権の期間を計算するには著作者死亡の年又は著作物を発行又は興行したる年の 翌年より起算す

(著作隣接権についての経過措置)
第十五条 この法律の施行前にした旧法の著作権の譲渡その他の処分で、この法律の施行前に行われた実演又はこの法律の施行前 にその音が最初に固定されたレコードでこの法律の施行の日から新法中著作隣接権に関する規定が適用されることとなるものに係る ものは、新法のこれに相当する著作隣接権の譲渡その他の処分とみなす。
2 前項に規定する実演又はレコードでこの法律の施行の際現に旧法による著作権が存するものに係る著作隣接権の存続期間は、 旧法によるこれらの著作権の存続期間の満了する日が新法第百一条の規定による期間の満了する日後の日であるときは、同条の 規定にかかわらず、旧法による著作権の存続期間の満了する日(その日がこの法律の施行の日から起算して五十年を経過する日 後の日であるときは、その五十年を経過する日)までの間とする。
3 この法律の施行前に第一項に規定する実演又はレコードについてした旧法第十五条第一項の著作権の登録に関する処分又は 手続は、これに相当する新法第百四条の著作隣接権の登録に関する処分又は手続とみなす。
4 附則第十条第一項及び第十二条第二項の規定は、第一項に規定する実演又はレコードについて準用する。