翻訳権・翻案権、二次的著作物、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利



翻訳権とは、別の言語に翻訳する権利であり、翻訳する場合は原作の著作者の許諾を得る必要があります。

翻案とは、元の著作物の特徴を活かしつつ、別の表現形態に変えたり、原作の一部を変更して別の作品を創作することです。 表現形態を変えるものに、脚本化、映画化、アニメ化等があり、後者の例として、編曲、プログラムの改変等があります。

翻訳又は翻案されたものが二次的著作物となり、二次的著作物の作成者は二次的著作物の著作者となります。 翻訳家、脚本家、編曲家等がそうです。

二次的著作物を利用するときは、二次的著作物の骨格を占める原作があって初めて二次的著作物が存在し得るわけですから、 原著作物の著作者の権利は二次的著作物の全てに及びます。従って、二次的著作物の公表には、原著作者の許諾を得る必要があり、 また、二次的著作物の氏名表示をするときは、原則として原著作物の著作者の氏名も併せて表示しなければなりません。

二次的著作物の利用にも原著作者の権利が及びますので、例えば、英語で書かれた原作の日本語翻訳版を出版しようとする場合、 出版社は翻訳者の許諾だけでなく、原作者の許諾も得る必要があります。すなわち、原作者は、それが翻訳されたものであろうが、 翻案されたものであろうが、二次的著作物が利用される限りにおいて、その権利を行使することができるということになります。

規定的には、上記のとおりですが、現実的には二次的著作物なのか、別著作物なのか不明なものも少なからずあり、裁判例も少な くありません。「どこまでもいこう」と「記念樹」事件はまさにそうですし、その他に有名なものとして「キャンディ・キャンディ 事件」があります。キャンディ・キャンディは「言語の著作物」と「美術の著作物」という全く別の表現形態の著作物が 二次的著作物かそれともそれぞれが独立した著作物であるかを争った事件です。裁判所の判断は、 「言語の著作物」に依拠しないで表現された「美術の著作物」であっても、表現されたものが「キャンディ・キャンディ」と 認識される限り、当該「美術の著作物」は「言語の著作物」の二次的著作物であるとして、「言語の著作物」の著作者に 原著作者の権利を認めました。

プログラムの著作物についてソフトハウス等に、特にその要求仕様のみを提示して製造を発注した場合、著作者はその著作物を 創作したものになりますから、当該ソフトウェアの著作者はその製造を請け負ったソフトハウスになる可能性が高く、著作者人格権 はソフトハウスに帰属することになります。著作者人格権の中に、同一性保持権が含まれていますから、発注者は勝手に納入された ソフトウェアを変更することができなくなります。そういう事態を防ぐためには、ソフトウェアの製造発注契約書には、著作権法 第27条及び第28条を含む著作権の移転条項と受注者の著作者人格権不行使特約を入れる必要があります。

(定義)
第二条
 十一 「二次的著作物」とは、著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する ことにより創作した著作物をいう。

(翻訳権、翻案権等)
第二十七条  著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を 専有する。

(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)
第二十八条  二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的 著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。